仮登記の種類と農地法許可を条件とした買主の地位

仮登記の種類と農地法許可を条件とした買主の地位について、簡単にまとめてみました。

農地の購入の契約をして、条件付仮登記の状態であることが如何に危険で不安定な状態であるか、ということを知っていただければ幸いです。

【仮登記の種類】
その後に行なわれる本登記に備えてあらかじめされる登記。

本登記が第三者への対抗力をもつのに対して、仮登記にはそのような効力がない。

仮登記をすることの目的は、本登記をしたときの優先順位の保全。

①1号仮登記(不動産登記法105条1号)
当事者間において物権変動があったが、本登記の申請をするのに必要な書類が揃わない場合に行なわれる仮登記

・登記識別情報(又は登記済証)を紛失して提出不能の場合

・第三者の許可や承諾などが必要な場合に承諾は得ているが証明する書面などが添付できない場合 など

②2号仮登記(不動産登記法105条2号)
当事者間において物権変動は生じていないが、下記のような権利保全のために行われる仮登記

・将来において権利変動をさせるための請求権があるときにその権利の保全
(売買予約 等)

・物権変動の効力発生が条件にかかっている場合、条件成就までの間の権利を保全
(農地法の許可を条件 等)

・仮登記担保(仮登記担保契約に関する法律)
貸金の返済がなされない時に、代物弁済などにより、担保物件の所有権が債権者に移転する契約。
所有権移転について仮登記が行われる。

(a)金銭債務(債権)を担保する目的の契約
(b)不履行の際、債務者または第三者(物上保証人)から債権者に、財産(権利)が移転することを目的とする契約
(c)代物弁済予約、停止条件付代物弁済契約、売買予約等の形式

【農地法許可を条件とした買主の地位】
農地法許可を条件とした買主は下記の権利を有するに過ぎない。

①売主に対し農地法上の許可申請協力請求権
※売買契約成立の日から10年の経過により時効によって消滅するおそれ
最高裁昭和55年2月29日判決
農地の売買における農地法上の許可申請協力請求権については、民法167条1項所定の債権にあたり、売買契約成立の日から10年の経過により時効消滅する。
(↑ 時効援用は権利濫用に当たるとの事例有)

②将来農地法の許可があった場合に所有権を取得できる権利
農地法の許可がなければ売買契約が締結されていても、農地の所有者は仮登記権利者ではなく所有者である。
仮登記権利者が当該農地の引渡しを受けることは、当該農地の引渡しを受けて違法転用する場合は無論のこと、当該農地を農地のまま引渡しを受けた場合も農地法違反となる。

【参考】
「農地について所有権に係る移転請求権保全の仮登記及び条件付権利(又は期限付権利)の仮登記の申請があった場合の取扱いについて」

①時効取得を原因とする農地の所有権移転登記等の申請があった場合の取扱いについて
(昭和52年8月22日付法務省民三第4239号民事局第三課長依命通知)
登記簿上の地目が田又は畑である土地について、時効取得を登記原因とした権利移転又は設定の登記申請があった場合は、登記官からその旨を農業委員会に対し適宜の方法により通知

②農地について所有権に係る移転請求権保全の仮登記及び条件付権利(又は期限付権利)の仮登記の申請があった場合の取扱いについて
(平成20年12月1日法務省民二第3071号法務省民事第二課長依命通知)
農地について、2号仮登記がされた場合は、当分の間、不動産の管轄登記所の登記官がその土地の所在、地番を取りまとめた連絡票を作成等して関係農業委員会へ情報提供