相続放棄をした後は関係ない?

 相続放棄の手続きを行なったあとに、どのような義務があるのでしょうか。相続放棄をしたのですから、一切関係はなくなるのではないでしょうか。

民法940条では相続放棄をした者による管理責任が規定されています。
 その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければなりません。

 

1.民法940条「相続放棄をした者による管理」

(相続の放棄をした者による管理)
第940条 相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。
2 第645条、第646条、第650条第1項及び第2項並びに第918条第2項及び第3項の規定は、前項の場合について準用する。

 この義務は次の相続人となる者に対する義務であり、第3者に対する義務ではないと言われています。

相続放棄をした者は次の相続人となった者が管理をするまで、管理を継続する必要があります。つまり次の相続人へ相続財産を引き渡す義務があります。

それでは、最後に相続放棄をした者はだれが管理をするまで管理を継続する必要があるのでしょうか。

それは相続財産管理人です。

例えば、空き家を含む相続財産を相続放棄をした場合、最後の相続放棄をした者は家庭裁判所へ相続財産管理人選任の申立てを行い、選任された相続財産管理人に引き渡すことで民法940条に規定する義務を果たしたことになります。

 

2.「自己の財産に対するのと同一の注意」とは

 「自己の財産に対するのと同一の注意」とは、民法918条1項 相続財産の管理の「相続人は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産を管理しなければならない。」と同義であるとされています。

いわゆる善管注意義務よりはその義務は軽減されています。