相続放棄の申述期間を徒過してしまった場合などにおいて他の手段を用いて事実上、相続放棄と同様の効果を実現することがあります。
1.相続発生前の相続放棄契約
推定相続人が他の推定相続人に対し、相続発生前に放棄を約する契約が行われることがあります。
しかしながら、相続発生前に相続人間で相続放棄を合意しても無効です。
2.特別受益証明書
相続人が被相続人から生前に相当の財産を得ているため、当該相続人の相続分はないことを証明(特別受益証明書)することで、他の相続人の相続分が増加することになります。
しかしながら、特別の受益の事実がなく、便宜的に特別受益証明書を作成したことについて、後日、その事実が争われるおそれもあります。
3.相続する財産をゼロとする遺産分割協議
相続分をゼロとする遺産分割協議を行うことで、相続放棄と同様の効果を得ることができます。
ただし、積極財産(プラスの財産)は相続人間で調整がつきますが、消極財産(マイナスの財産)に関する相続人間の遺産分割は債権者に対抗できません。
消極財産は原則相続分に応じて相続され、債権者の同意があった場合に限り、その遺産分割の内容を債権者に対抗できることとなります。