平成31年1月11日、「所有者不明土地の売却が可能に」等の報道がされました。
これに関する意見募集が下記のように始まりました。
なお、下記の説明はあくまで私個人の意見も含まれていますので、ご了承ください。
「変則型登記の解消に向けた法律上の措置に関する担当者骨子案」に関する意見募集が始まりました。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=300080176&Mode=0
所有権のない土地の登記記録が以下のような状態の土地を「変則型登記」といいます。
①氏名又は名称のみで住所の記録がない
②A外〇名などと記録され、Aや他の共有者の住所の記録がない
③住所の記録がなく「大字〇〇」などのように大字名や集落名が記載されている
この変則型登記がされた土地は、内閣府 経済・財政一体改革推進委員会 第15回 国と地方のシステムワーキング・グループ での配布資料P10、11によれば、全国に実に約230万筆存在する可能性、と説明されています。
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/wg6/181115/pdf/shiryou1-1.pdf
骨子案の中身は大きく分けて以下のとおりです。
1.登記官による変則型登記の所有者等の探索
2.所有者等探索委員(仮称)による所有者等の探索
3.変則型登記がされた土地の管理命令の創設
登記官は、変則型登記がされた土地について、実際の表題部所有者であるものの登記を行うために、所有者等を探索することが予定されています。
この探索のため、実地調査等(当該変則型登記がされた土地や近隣の土地の実地調査、占有者等から事実聴取等)や関係地方公共団体等に対する情報提供の求めること、利害関係人による意見の提出を行うことを骨子案としています。
この所有者等の探索を経て、表題部所有者が明らかになれば、職権で所有者の登記を行うことになります。
しかしながら、登記官自らが上記の作業を行っているのでは、登記事務全般への影響が否めません。
そこで変則型登記がされた土地の所有者等の探索を行い、登記官に意見を提出させるために、「所有者等探索委員(仮称)制度」を設けるとしています。
所有者等探索委員(仮称)は必要な知識と経験を要することから、司法書士、土地家屋調査士が考えられていると思われます。
変則型登記がされた土地は、既に何十年も「変則型」の状態であり、上記1の手続を経ても簡単に解消できるものではないと推測されます。
変則型登記がされた土地について、上記1の手続を経ても所有者等が特定できない場合は、その旨の登記を行います。
裁判所は、上記登記がされたものについて、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより、当該土地を対象として、管理者による管理を命ずる処分をすることができる制度を創設するとしています。
利害関係の例示としては、①がけ地の崩落防止、②民間事業者等が上記の土地を買収し、開発を行う、③時効取得を主張するものが提訴するときなどがあがっています。
選任された管理者は、①保存行為、②対象土地の性質を変えない範囲において利用又は改良する行為、を超える場合(売却など)には裁判所の許可を受ける必要があります。
売却をした場合には、当該売却代金は供託が予定され、所有者が現れるまでの間の管理報酬に充てられることがないような制度設計をしています。
骨子案を読み込んだ限り、概略は上記のとおりです。
あくまで所有者不明土地のうち、変則型登記がされた土地を対象としたものですが、また一歩前進したということになります。