相続をめぐるトラブルを避けるため、遺言を活用しましょう

 相続をめぐるトラブルは、遺言書が無かったために起きるときもあります。
 また、希望する遺産の分配を遺言を活用することで叶えられることもあります。 

 例えば、以下のような例があります。
 ・相続人は、妻と兄弟であり、その兄弟も何人か亡くなっている。
 ・事業を継続させるために、財産を細分化させたくない。
 ・孫にも遺産を分けたい。
 ・お世話になった人に財産を贈りたい。

 遺言は、自分の考えで自分の財産を処分できる明確な意思表示です。
 残される遺族や関係者のことを考慮し、遺言は元気なうちに書いておくことが必要です。

1.遺言の方式
 遺言の方式には次の種類があります。
 どの遺言の方式でも優劣はありません。

普通方式 特別方式
・自筆証書遺言
公正証書遺言
・秘密証書遺言
・危急時遺言
 病気や怪我、船などの事故で死亡の危急に迫った者が行える
隔絶地遺言
 伝染病による行政処分によって交通を遮断された者が行える
 船舶に乗っていて陸地から離れた者が行える

 

2.代表的な遺言(自筆証書遺言、公正証書遺言)

(1)自筆証書遺言

 作成が手軽なだけに、偽造、変造、隠匿、破棄されるおそれがあります。
 遺言は後日の紛争を防ぐ意味で、法律で一定の方式が定められており、方式を守らないと無効になります。
 保管場所にも、留意が必要です。
 また、遺言者が死亡後、家庭裁判所に検認の手続きが必要です。

(2)公正証書遺言

 公証人が関与して作成する遺言をいいます。
 遺言者の死亡後に、家庭裁判所の検認が不要なこと、遺言としての確実さなどが評価され、年々この遺言方式を利用する人が増えています。
 遺言書の原本は、公証人役場に保管され、 遺言検索システムの利用が可能です。

自筆証書遺言 公正証書遺言
筆記 全文、日付、氏名を自書 公証人に口述し、公証人が作成
署名押印 本人が行う 本人(例外あり)
証人、公証人
公証人・証人 不要 必要
公証人1名、証人2名以上
家庭裁判所の検認 必要 不要
コスト ほとんどかからない 公証人の手数料
証人への謝礼が必要な場合もあります
長所 誰にも知られずに作成できる
費用が安い
形式不備がない
原本を公証人役場が保存
偽造、紛失が無い
短所 方式不備、内容が不明瞭のおそれ
偽造、隠匿のおそれ
紛失のおそれ(保管の問題)
証人2人が必要
作成に費用が必要

 

3.遺言でできること

 遺言でできることには次のようなことがあげられます。

 ・相続分の指定
 ・遺産分割の指定またはその委託
 ・遺贈・信託の設定、寄付
 ・負担付遺贈
 ・遺言者執行者の指定やその委託
 ・認知
 ・相続人の廃除や排除の取消し
 ・遺留分減殺方法の指定
 ・特別受益の持戻し免除
  など
  
 ※結婚・離婚・養⼦縁組に関することはできないなど、遺言でできることは、⺠法上法定されています
 ※負債につき遺産分割の指定をしても、債権者には対抗できません
 ※葬儀の⽅法の指定は遺⾔者の希望とされています
 ※「付⾔事項」(メッセージ)を記載しておくと遺⾔の趣旨がより伝わりやすくなります

4.遺留分について

遺留分については、こちらを御覧ください。

5.その他

(1)共同遺言の禁止
夫婦であっても、同一の遺言書に遺言することはできず、各自で作成しなければなりません。

(2)遺言の取消し
後の遺言で先の遺言を取消したり、後の遺言で先の遺言内容に反する遺言をしたりなど、お亡くなりになるまでに遺言能力があれば遺言は変更が可能です。
なお、日付の新しい遺言書の内容が優先されます。

 

詳しくは当事務所までお問い合わせください。